「ハレンチという言葉は、もう誰も使わない死語ではないか?」という疑問も度々耳にします。しかし、SNS(XやInstagram)やネット掲示板、質問サイトの生ログを追跡・検証すると、意外な実態が浮かび上がってきます。
確かに、20代以下の若年層が友人同士のリアルな会話で「お前、ハレンチだな」と真顔で口にする場面はほぼ皆無です。その意味では「日常的な口頭語」としてはレトロな部類に入ります。しかし、デジタル空間や創作物の領域では、まったく別の形で活発に消費されています。
代表的なのが、アニメやライトノベルにおける「お約束の様式美」としての使われ方です。ラッキースケベな状況に出くわしたヒロインが、顔を真っ赤にして主人公を罵倒する「この破廉恥(ハレンチ)モノ!」というツンデレ構文。この定型句は2020年代半ばを過ぎてもなお定番として機能しており、ネットコミュニティでもミーム(パロディネタ)として愛用されています。
また、近年のネット上の反応を定性的に分析すると、以下のような2つの大きな潮流が見て取れます。
ひとつは、「政治家の裏金問題や不祥事のニュースを見た際、『これこそ文字通りの破廉恥だな』と原義を思い出して納得した」という知的な再評価の声。もうひとつは、「カタカナで書くと昭和レトロでちょっとコミカル、漢字で『破廉恥』と書くと文学的で刺さる」という、言葉のビジュアルによる使い分けです。
死語として消え去るどころか、ポップカルチャーの定型句と、権力批判のための皮肉という「2つの鋭い武器」を使い分けるハイブリッドな表現として定着しています。