松田聖子と紅白歌合戦の距離感を語る上で、避けて通れない転換点が2021年(第72回)の出場辞退の経緯です。同年11月に発表された出場歌手名簿にその名を連ねていたものの、リハーサル直前の12月18日、愛娘である神田沙也加さんが札幌市内のホテルから急逝するという痛ましい出来事が発生しました。
公式発表資料および関係者の証言を総合すると、直後は予定されていたディナーショーの全日程を即座に中止。NHK側は松田聖子側の心情を最優先に考慮し、出場に関する最終判断をギリギリまで保留する異例の姿勢を示しました。そして12月25日、所属事務所からの申し出を受理する形で「出場辞退」が正式発表されたのです。
一部の週刊誌やネットメディアでは「ステージ上で追悼歌を捧げるべきだ」「NHKからの出演要請を断固拒絶した」といった感情論や対立構図を煽る論調も散見されました。しかし、制作関係者の証言によると、現場には対立など微塵もなく、愛娘を突如喪った母親としての心身の限界をNHK制作陣も全面的に受け入れたというのが実態です。公の場で悲痛を娯楽として消費させないという、表現者としての尊厳と母としての境界線を毅然と守り抜いた選択でした。