「床屋=昭和のお父さんが行く場所」というステレオタイプは、もはや過去のものです。2010年代半ばから欧米のトラディショナルなバーバーカルチャーが日本へ逆輸入され、無骨でクラシカルなインテリア、ポマードの甘い香り、精緻なフェードカットを提供するネオバーバーが都市部を中心に爆発的な支持を獲得しました。
このブームの背景には、2015年に厚生労働省が実施した規制改革があります。かつては衛生上の観点から固く禁じられていた「理容室と美容室の同一店舗内での開設」が、重複する衛生設備の共用を認める形で規制緩和されました。これにより、1つのサロンの中に理容スペースと美容スペースを併設したり、技術者が両方の資格を取得するダブルライセンスの流れが急速に加速しました。
現場を取材すると、理容師と美容師の双方の免許を持つオーナースタイリストは次のように語ります。「美容師の感覚で柔らかいトップの束感を作りながら、襟足やもみあげは理容師の本格的なレザー(カミソリ)でビシッとラインを出す。両方の技術を融合させることで、従来のサロンでは実現できなかった完成度を提供できる」。制度とトレンドの進化によって、二者択一だった業界の垣根は着実に再編されています。