収録番組であれば編集段階でカットし、効果音や別テロップで覆い隠すことが可能です。しかし、生放送の情報番組やスポーツ中継の現場では、タレントやコメンテーターの口から突発的に禁句が飛び出すインシデントが後を絶ちません。
キー局で長年制作に携わるディレクターは、緊迫するサブ(副調整室)の空気を次のように証言します。「生放送で出演者が『あの犯人、完全に気が触れてますよね』と口走った瞬間、副調整室のプロデューサーと考査担当の背筋は凍りつきます。即座にアナウンサーのインカムへ『エンディングでお詫びを入れる』という指示が飛び、法務・考査と文面を秒単位で練り上げる作業に入ります」。
番組末尾で流れる「訂正とお詫び」は、単なるマナーではありません。スポンサー企業に対するクレームの波及を防ぎ、放送倫理・番組向上機構(BPO)への申し立てを回避するための切実な防衛策です。
インターネットやSNSが普及した現在、失言の切り抜き動画は瞬く間に拡散され、番組だけでなく発言したタレント本人の社会的信用も失墜しかねません。アーカイブ配信(TVerや各局オンデマンド)が収益の柱となった現在では、生放送後に該当箇所を無音化したりカットしたりする再編集コストも発生するため、現場の緊張感はかつてないほど高まっています。