視点を世界に向けると、ヒグマ(学名:Ursus arctos)は北半球の寒帯から温帯にかけて極めて広大な生息域を誇るアンブレラ種です。世界のヒグマ生息地は、ロシア・シベリアのタイガ林帯、カムチャツカ半島、アラスカの海岸部、カナダおよび米国本土の一部(グリズリー)、そして東欧のカルパティア山脈やスカンディナヴィア半島にまで及んでいます。
ロシア極東のカムチャツカヒグマやアラスカのコディアックヒグマは、豊富なサケ・マス資源を摂取することで体重が500〜700キロに達し、ホッキョクグマに匹敵する地球上最大の陸生肉食獣として知られています。これに対し、北海道のエゾヒグマは大陸のウスリーヒグマと同一亜種または極めて近縁とされ、遺伝的には孤立した島嶼生態系の中で適応してきました。
世界的な保全状況と比較した際、北海道の環境は特異です。欧州では生息地の分断と駆除の歴史により多くの国で絶滅または数十頭規模まで激減し、厳重な保護プログラム下にあるのに対し、北海道では約8万平方キロメートルの島内に1万頭を超えるメガファウナが人間社会と目と鼻の先で暮らしているのです。これは世界の先進諸国の中でも類を見ない過密接触の構図であり、国際的な野生動物管理研究者からも注視されています。