高橋一生の半生を語る上で避けて通れないのが、実母との激しい確執です。報道や本人の述懐によると、母親は非常に感情の起伏が激しく、事業の立ち上げと失敗を繰り返すなど、金銭面でもトラブルが絶えない人物でした。
一生が苦労して購入した自家用車を勝手に売却されてしまうなど、度重なる金銭トラブルと精神的負担に耐えかねた一生は、20代半ばで母親との関係を完全に断ち切る(絶縁する)決断を下します。この絶縁状態は実に約10年間に及びました。
転機が訪れたのは2015年の夏でした。弟から「母親ががんで入院し、余命いくばくもない」という連絡を受けた一生は、長年の葛藤を抱えながらも病室を訪れます。やつれた母親と対面した際、母親の口からこぼれ落ちたのは「今までごめんね」という心からの謝罪の言葉でした。
一生はその謝罪を受け止め、「もう大丈夫だよ」と返答。10年間のわだかまりが溶けたわずか1週間後、母親は息を引き取りました。この壮絶な生と死のドラマ、そして許しのプロセスが、高橋一生という役者の人間的深みと圧倒的な表現力を形作ったことは疑いようがありません。