「千里眼」とは文字通り、千里(約4000キロメートル)の遠方まで見通すことができる並外れた視力、あるいは隠された物事や未来の真相を直感的に見抜く鋭い洞察力を意味します。
そのルーツを辿ると、中国古典の『魏書』楊逸伝に登場する「楊逸に千里眼あり」という記述に行き着きます。当時、優れた情報収集力と鋭敏な頭脳で悪事を見逃さなかった楊逸の観察眼を讃えた表現が語源とされています。また、航海の安全を守る道教の女神・媽祖(まそ)の従者として知られる鬼神「千里眼」と「順風耳(じゅんぷうじ)」の伝説も有名です。千里先を見通す目と、あらゆる音を聞き分ける耳を持つこの二神の組み合わせは、人智を超えた情報把握の象徴として語り継がれてきました。
日本語の四字熟語や類語としては、「先見の明」や「明鏡高止」、あるいは「神異」といった言葉が挙げられますが、物理的な距離や遮蔽物を超えて視覚化するニュアンスを持つ点において、千里眼は極めてユニークな立ち位置を確立しています。