イタリアサッカーを語るうえで欠かせないのが、1990年代から2000年代初頭にかけて黄金期を彩ったセリエAビッグ7変遷(セッテ・ソレッレ=7姉妹)の文脈です。当時、ユヴェントス、ミラン、インテルに加え、パルマ、フィオレンティーナ、ラツィオ、ローマが天文学的な資金を投じ、バッジョ、ロナウド、ジダンら世界最高峰のスーパースターが毎週激突していました。
しかし、放映権バブルの崩壊とオーナー企業の破綻により、2000年代後半から2010年代にかけてリーグ全体が深刻な冬の時代を経験します。この苦難の歴史が、結果としてイタリアサッカー歴史と特徴を根本から変革させる起爆剤となりました。
伝統的なイタリアのアイデンティティは「カテナチオ」と呼ばれる堅守速攻と、相手の長所を徹底的に消す冷徹なリアリズムでした。しかし現代のセリエAは、コレクティブなハイプレス、GKをビルドアップの起点にした数的優位の創出、可変フォーメーションなど、欧州で最も知性的でダイナミックな戦術の実験場へと生まれ変わったのです。2022-23シーズンに世界中を震撼させたナポリ優勝理由もまさに、この戦術的自由度と圧倒的なボール前進速度の結実でした。