非業の怨霊を祀る厳粛な神域が、なぜ現代においてプロサッカー選手や部活動の学生が詰めかける「スポーツ・球技の聖地」へ変貌を遂げたのか。その鍵は、この土地がかつて公家の名門飛鳥井(あすかい)家の邸宅跡地であった点にあります。
飛鳥井家は平安時代から続く「和歌」と「蹴鞠(けまり)」の宗家でした。同家の屋敷神として代々手厚く祀られていたのが、鞠の精霊とされる「精大明神(せいだいみょうじん)」です。白峯神宮が同地に創建された際、精大明神もそのまま地主社として境内に合祀されました。
鞠は一度蹴り上げたら地面に落としてはならない競技です。このことから「ボールが落ちない」「運を落とさない」「最後まで粘り強く拾い続ける」という強烈な祈念が宿り、近代以降はサッカーを中心に、野球、バスケットボール、バレーボール、テニスなどあらゆる球技関係者から絶大な信託を集めるようになりました。
境内右手には、サッカーボールをかたどった石造りのモニュメント「蹴鞠の碑」が鎮座しています。碑の内部には自由に回転させられる石のボール(撫で鞠)が組み込まれており、この球を自らの手で回しながら勝利や技術向上を祈願すると、球技上達のご利益を直接授かることができるとされています。日中は多くの学生アスリートが真剣な表情で石球に触れ、無言で勝利を誓う光景が絶えません。
さらに見逃せないパワースポットが、末社に鎮座する「撫で虎」や、水神を祀る「潜龍社(せんりゅうしゃ)」です。撫で虎は武芸上達や厄除け、心身の剛健を司り、自らの痛む部位や強化したい部位と同じ箇所を撫でることで邪気を祓うと信じられています。怨霊の強力なエネルギーを鎮魂によって大いなる守護力へ転換し、そこに伝統の技芸神が融合した境内は、勝負に挑む人間にとって極めて濃密なパワースポットを形成しています。