『ゴールデンカムイ』という秀抜なタイトルには、重層的な意味が込められています。英語の「Golden」とアイヌ語の「Kamuy」を組み合わせた造語ですが、野田サトル氏のインタビューや作中の描写を紐解くと、以下の3つの深層構造が浮き彫りになります。
第一に、「金塊そのものが持つ魔力(カムイ)」です。膨大な富は、国家を揺るがし、人間の理性を吹き飛ばす抗えない力を持っています。アイヌの信仰において、人知を超えた強い力を持つものはすべてカムイと呼ばれます。つまり、血で血を洗う争奪戦を引き起こした金塊こそが、人間を狂わせる「黄金のカムイ」そのものであったという解釈です。
第二に、ヒロインであるアシリパの宿命です。アシリパ(Asirpa)という名前には、アイヌ語で「新しい年」「未来」という意味が込められています。古い因習や滅びゆく伝統に縛られるのではなく、近代化の荒波の中でアイヌの尊厳を守りながら未来へ生き抜こうとする彼女の姿こそが、作中における「黄金のように輝く尊いカムイ」を体現しています。
そして第三に、「北海道の大地そのものの豊穣さ」です。物語の終盤で明らかになる金塊の真相は、単なる現金の山ではなく、土地の権利書という「生きるための大地」に直結していました。自然から奪うだけではなく、自然とともに生きる。金という物質的富を超えた「大地の魂」こそが、作品が提示した最終的な答えでした。