移動スピードを最優先する場合、多くの人は反射的に「のぞみ」を選びがちです。しかし、実際の運行ダイヤを精査すると意外な事実が浮かび上がります。
新山口駅から新大阪駅までの標準所要時間は、最速達の「のぞみ」で約1時間48分〜1時間58分です。一方、山陽・九州新幹線直通の「さくら」は約1時間53分〜2時間02分で結んでいます。両者の時間差は実質5〜10分程度に過ぎません。停車駅の違い(さくらは新神戸、姫路、岡山、福山、広島、徳山などに停車)はあるものの、山陽新幹線区間内では最高時速300km運転を行うため、体感的な到達速度に大きな隔たりはないのです。
注目すべきは客室環境の決定的な差です。JR西日本およびJR九州が運用する「N700系(8両編成)」で運行される「さくら」の普通車指定席は、通路を挟んで「2列×2列」の4アブレストシートが採用されています。シート幅は約465mmと広く、グリーン車と同等の肉厚なクッションと重厚なアームレストが標準装備されています。
これに対し、東海道・山陽新幹線を走る16両編成の「のぞみ」は、普通車指定席が「3列×2列」の5アブレストシートです。横幅が窮屈になりがちな中央のB席が存在し、長時間のデスクワークや休息においては明らかな居住性の差が生じます。同じ移動時間で料金も210円安価な「さくら」の指定席が確保できるのであれば、「のぞみ」を優先する実利的な理由は薄いといえます。