レスラーがリングの外で脚光を浴びる先駆けとなったのが、1990年代にリリースされた写真集『風の媚薬』だ。格闘家としての鍛え抜かれた肉体美と、少女のような憂いを帯びた表情。それが見事に同居したこの作品は、写真界や出版界にも巨大なインパクトを与えた。
当時、アスリートがヌードやセミヌードを披露することには強い賛否両論が渦巻いた。「プロレスを安売りしている」という手厳しい批判の声も容赦なく浴びせられた。しかし、彼女の視線はもっと先を見据えていた。レスラーとしての自己表現に境界線は引かない。自らの美貌を最大の武器として使いこなし、男性ファンのみならず同世代の女性たちの視線すら釘付けにした。それは日本のスポーツエンターテインメント界において、女性アスリートが自身のセクシャリティと強さを同時に誇示した歴史的転換点でもあった。