渋沢栄一が目指したのは、一部の特権階級だけが潤う金融システムではない。信用を供与し、産業を育て、社会全体を豊かにする開かれた銀行業の確立だった。「道徳経済合一説」を掲げた彼は、利潤の追求と社会倫理の相反する要素を高次元で融合させようと試みた。
預金を集めて企業に貸し出すという現代的な金融サービス業の形態は、彼の強い信念によって日本に根付いた。資金の需要者を見極め、成長が見込める事業にリスクを取って投資する。第一国立銀行が果たした役割は、単なる両替商の延長ではなく、日本における近代起業家精神のインキュベーターそのものだった。