多くのヒット作を手がけてきた大森美香の手腕は、本作でも遺憾なく発揮された。重厚かつ複雑な幕末の政治劇を分かりやすく整理しつつ、市井の人々の暮らしや感情の機微を丁寧に拾い上げた構成力は見事というほかない。合戦シーンの派手さに頼るのではなく、言葉の力と人間の葛藤を中心に据えたテレビドラマとしての完成度は極めて高い。
徳川家康をストーリーテラーとして配した斬新な演出も、視聴者を飽きさせない巧みな工夫だった。歴史の大きな流れと個人のミクロな視点を自由に行き来するアプローチによって、時代劇ファンだけでなく若い世代の視聴者層をも引きつけることに成功したのだ。