本作を語る上で欠かせないのが、原案となった黒澤明監督の『七人の侍』との構造的な比較です。『荒野の七人』は原作のプロットやキャラクター配置を驚くほど忠実にトレースしながらも、日米の文化背景と世界観の根底にある哲学を大胆に換骨奪胎しています。
最大の違いは「戦う者たちのアイデンティティ」にあります。『七人の侍』の武士たちは、戦国乱世で行き場を失った浪人とはいえ、もともとは士農工商の頂点に属していた階級です。彼らの行動動機には、武士道の矜持や義侠心、そして自らの失われた存在意義を民衆救済に見出す悲壮な倫理観がありました。
対する『荒野の七人』の面々は、法と無秩序が交錯するフロンティアを生きる完全な個人主義のアウトロー(流れ者)です。彼らが引き受ける動機は「わずかな日当」と「暇つぶし」、あるいは「自らの腕試し」というプラグマティックなものから始まります。階級社会の摩擦を描いた黒澤版に対し、スタージェス版は「家族や土地を持てない根無し草の男たちの哀愁と連帯」へと主題をシフトさせました。
黒澤明監督自身、完成した本作を鑑賞した後にジョン・スタージェス監督へ見事な細工の日本刀を贈り、その脚色と演出の手腕を称賛したという逸話は広く知られています。模倣にとどまらず、アメリカ西部劇という独自の神話体系へ見事に昇華させたからこその敬意でした。