シャツの立体感を決定づけるのは、胴体のシワ以上に「端部(襟、袖口、前立て)」の設計です。人体の輪郭線に対して服のパーツが正しく回り込んでいるかどうかが、プロとアマチュアの画力を分ける境界線になります。
1. ワイシャツ 襟の構造(台襟と羽襟の二段構造)
襟を描く際、首の付け根からいきなり三角形の布が生えているような描き方をしてはいけません。ワイシャツ 襟の構造は、首を支える帯状のパーツである「台襟(スタンドカラー)」と、その上から折り返される「羽襟(トップカラー)」の2層で成り立っています。
作画手順としては、まず首という円柱の周りに「少し隙間を空けた帯(台襟)」を巻き付けるようにアタリを取ります。その台襟の最上部を基点として、外側へ向かって羽襟を折り返すことで、襟元が首にめり込まず、自然な浮きと立体的な空間が生まれます。
2. ボタンと前立ての描き方
胸元中央を通るボタンと前立ての描き方も、平面化を防ぐ重要なポイントです。前立て(フロントプラケット)は布が二重・三重に重なっているため、通常の生地よりも明確な厚みと硬さを持っています。
身体の中心線に対して前立ての帯をまっすぐ下ろすのではなく、胸のふくらみや鳩尾(みぞおち)の凹凸に合わせてリボンのように這わせます。また、ボタンを留めている箇所は生地がわずかに引き寄せられて「横方向の細い引っ張り」が生じる一方、ボタンとボタンの間はわずかに浮き上がるという微細な起伏を描き込むと、リアルな肉感が立ち現れます。
3. シャツの袖とカフスの描き方
腕周りの作画で最も差がつくのが、シャツの袖とカフスの描き方です。手首のパーツであるカフス(袖口)は、手首の関節に対して斜めに巻き付きます。肘側から手首に向かって生地がすぼまる際、カフスの直前で生地が折り畳まれて「タック(プリーツ)」と「たわみ」が発生します。
さらに、袖の外側には「剣ボロ(スリーブプラケット)」と呼ばれるボタン付きの開きが存在します。これを省略せずに描くことで、手首周りの情報密度が格段に向上します。
4. スーツとシャツの着こなしイラストの黄金比
ビジネスパーソンや制服キャラクターを描く場合、スーツとシャツの着こなしイラストにおける定石を把握しておく必要があります。ジャケットの背襟からワイシャツの襟が「約1.5cm」露出し、ジャケットの袖口からカフスが「約1〜1.5cm」覗くのがフォーマルウェアの正しい比率です。この隙間と重なりを正確にレイヤー分けして描画することで、装いの品格とスーツの仕立ての良さを表現できます。