多くの母親が直面する最大の精神的障壁は、トラブルが生じた際に実の息子が見せる冷淡な態度です。「育ててくれた親よりも、出会って数年の妻を庇うのか」という感情は、母親としての自尊心を深く傷つけます。
家族社会学の視点からこの現象を紐解くと、現代の家族システムにおける力学が浮き彫りになります。昭和から平成初期にかけて主流だった「家制度の連続性」を重んじる構造から、令和の現在では夫婦単位の独立核家族が基本単位となっています。息子にとって、自身の生活基盤やパートナーシップを安定させるためには、物理的・心理的にも妻の機嫌や意向を最優先せざるを得ない生存戦略が働いています。
心理学で提唱される心理的バウンダリー(境界線)の観点からも説明がつきます。母親側が無意識のうちに息子を「自分の延長」と認識している場合、配偶者である嫁への違和感は「息子の家庭への侵害」として増幅されます。息子側が母親に対して防衛的あるいは攻撃的になるのは、新しい家庭を守るための自立の反動であり、母親を軽視しているわけではありません。