かぐや姫の物語|帝のアゴ角度とバックハグの真相!高畑演出を解剖

かぐや姫の物語|帝のアゴ角度とバックハグの真相!高畑演出を解剖

話題沸騰中の かぐや姫の物語|帝のアゴ角度とバックハグの真相!高畑演出を解剖について、多角的な視点をご紹介しています。

ジブリ作品『かぐや姫の物語』がテレビ放送されるたび、X(旧Twitter)をはじめとするSNS空間では「帝のアゴ」「アゴの角度」に関する投稿が爆発的に拡散します。ネットユーザーによる画像解析では、帝の顎先の角度がおよそ27度から45度の鋭角であると計測され、分度器を当てたパロディ画像やスマートフォンの画面を割るコラージュ画像が飛び交うなど、長年にわたって格好のネタとして消費されてきました。

しかし、アニメーション制作の現場記録や関係者の証言を紐解くと、この造形は単なる作画崩壊やギャグではなく、高度に意図されたリアリズムの帰結であることが分かります。人物造形・作画設計を手掛けた田辺修氏と高畑勲監督が追求したのは、端正な美男子として描かれがちな貴人を、生々しい欲望と自信に満ちた「愚かさをも内包する生身の人間」としてスクリーンに定着させることでした。

平安貴族の伝統的な肖像画である「引目鉤鼻(ひきめかぎばな)」の様式を踏襲しつつ、横顔になった瞬間に自己顕示欲が突き出るような誇張を施すことで、観客に対して無意識の違和感と滑稽さを植え付ける仕掛けとなっています。美麗なファンタジーに逃げず、権力者の内面にある薄っぺらさを造形そのものに語らせる手法こそ、高畑リアリズムの真骨頂と言えます。

中川 明日香
著者

中川 明日香

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。