ネット上の掲示板やSNS、知恵袋といったコミュニティには、圧倒的な能力差に直面して心を折られた人々の切実な告白が日々寄せられています。大手ITベンダーで働く30代のソフトウェアエンジニアは、技術者コミュニティの手記で次のように振り返っています。
「社内ではエース扱いされ、それなりの自負を持って参加したグローバルカンファレンスのハッカソンで、10歳近く若い海外の学生に遭遇した。自分が丸一日かけてデバッグしていた設計を、彼はわずか30分で根本から書き換え、遥かに洗練されたアーキテクチャを涼しい顔で提示した。『上には上がいる』という陳腐な言葉では片付けられない、DNAレベルの壁を感じて、帰りの新幹線で涙が止まらなかった」
また、海上保安庁や自衛隊、航空業界のような厳格な規律と高度な操船・操縦技術が求められる現場においても、過信が重大なインシデントを生む事例が後を絶ちません。報道各社の発表によると、巡視艇を運航中に浅瀬へ乗り揚げて船体を損傷させ懲戒処分を受けたベテラン職員の事例のように、「長年の経験からくる慢心」や「自分は熟練しているという油断」が思わぬ過失を招くケースが報告されています。実力差や自然の厳しさを前に「自分などまだ未熟である」という健全な敬意を忘れた瞬間、組織も個人も脆く崩れ去るという現場の教訓は極めて重いものがあります。
卓越した技術者や表現者が集う現場で観察されるのは、初期の挫折を乗り越えた者だけが到達できる「他者の卓越性をリスペクトしつつ、自分の領域を切り拓く」という諦観と覚悟の境地です。