ネット検索で散見される最大の誤認は、「豆腐の角に頭をぶつけて死ね=江戸時代から伝わる伝統的なことわざ」という解釈です。文化庁や国語学者の見解においても、これは厳密には「ことわざ(諺)」ではなく「慣用句・俗諺(ぞくげん)」に分類されます。
なぜこの誤解が広まったのか。その背景には、国文学において「豆腐」が江戸落語の代名詞的な食材である事実が関係しています。『ちりとてちん』の腐った豆腐、『酢豆腐』の通人ぶる若旦那など、落語の世界では豆腐が滑稽味の象徴として扱われてきました。このため、明治の近代落語で生まれた「情死の情死」の台詞が、あたかも古典落語成立期(江戸中期)から脈々と受け継がれてきた伝統句であるかのように混同されたのです。
また、知恵袋やSNS上では「四角四面で融通の利かない堅物を皮肉った言葉」と解説されることもありますが、これは「四角四面の豆腐」という言葉遊びと後から結びついた二次的解釈に過ぎません。本来の語源的ルーツはあくまで「生きている価値がないほどふがいない人物への毒舌」であり、生真面目さを咎める言葉ではなかった点に注意が必要です。