須藤京一の代名詞とも言えるマシンが、三菱ランサーエボリューションIII(CE9A)である。ハイパワーな4WDターボマシンであり、その心臓部には当時WRC(世界ラリー選手権)の現場で実戦投入されていた「ミスファイアシステム(アンチラグシステム)」が組み込まれていた。アクセルオフ時にもタービンを回転させ続け、ターボラグをゼロにするこの技術は、当時の自動車産業における最先端テクノロジーの象徴でもあった。
劇中で鳴り響く「パンパン!」という独特の破裂音は、視聴者に強烈なインパクトを与えた。だが、彼のチューニングの本質は単なるパワーアップにとどまらない。4WD特有のアンダーステアを克服するため、コーナー進入時の荷重移動とブレーキリリースを緻密に計算したサスペンションセッティングが施されていたのだ。ハイパワーマシンを力任せに振る舞わせるのではなく、物理法則に従って効率的に減速・加速させる合理的なチューニングこそが、ランエボIIIの真の恐怖であった。