映画という表現媒体の文法を根底から覆したのが、名匠フェデリコ・フェリーニだ。彼は従来の直線的な物語構造を大胆に解体し、夜から朝へと移ろうエピソードの連鎖によって、狂乱の都市の断面をモザイク画のように描き出した。現実と幻想の境界線を曖昧にするその幻惑的なタッチは、後の映画監督たちに計り知れない影響を与えている。
その壮大なビジョンを具現化する舞台となったのが、イタリア映画の聖地チネチッタ撮影所である。フェリーニは本物のヴェネト通りでロケーション撮影を行うことを潔しとせず、スタジオ内に実物そっくりのセットをゼロから構築させた。照明、建物のパースペクティブ、アスファルトの濡れ具合に至るまで、徹底的にコントロールされた人工空間。虚構を極めることで逆説的に人間の真実をあぶり出すという、途方もない映像実験がそこにあった。