モデルから俳優へ転身した直後、阿部は「二枚目モデル」という固定観念による深刻なスランプを経験する。その壁を打ち破った契機こそ、テレビ朝日系ドラマ『TRICK』の上田次郎役や、映画『テルマエ・ロマエ』の古代ローマ人ルシウス役に見られる、振り切ったコメディ演技だった。
上田次郎は物理学教授という設定だが、阿部は単に滑稽さを演じるのではなく、理系特有の理屈っぽさと人間臭い弱さを緻密に計算して演じ分けた。また『テルマエ・ロマエ』で見せた身体表現も、誇張とリアリティの境界線をロジカルに割り出すことで、ナンセンスな設定を第一級のエンターテインメントへと昇華させた。直感だけに頼るのではなく、設計図を引くように役の動機を組み立てるアプローチは、まさに理系頭脳の真骨頂といえる。