目の前にゴミや虫が飛んでいるように見える現象は、眼球の大部分を占めるゼリー状の組織「硝子体(しょうしたい)」の変質によって引き起こされます。硝子体は本来、99%の水分と微量のコラーゲン線維からなる無色透明な組織ですが、様々な要因で線維が凝縮したり濁りが生じたりします。この濁りが網膜(目奥のスクリーン)に影を落とし、視界の中で黒い点や輪、糸くずのように知覚されるのが硝子体混濁の正体です。
最も頻度が高いのは、加齢に伴って発生する生理的飛蚊症です。人間の眼球は40代から60代にかけて硝子体が徐々に液状化し、容積が縮むことで網膜から硝子体が剥がれ落ちる「後部硝子体剥離」が進行します。この剥離自体は自然な老化現象であり、多くの場合視力そのものを奪うことはありません。また、近視が強い方は20代〜30代の若年層であっても眼軸長(目の前後の長さ)が長いために硝子体の変性が早く進み、早期から黒い点を自覚することが珍しくありません。
視線を右に動かすと黒い点も右にフワリと流れ、視線を止めると少し遅れて漂うように動く特徴を持つため、多くの人が「目の表面にゴミが付いている」と勘違いして目を擦ってしまいます。しかし、原因は眼球の内部にあるため、洗眼液で目を洗っても黒い点が消えることはありません。