明治(ほほえみ)や森永乳業(はぐくみ)、雪印ビーンスターク、アイクレオなど国内主要メーカーは、いずれも調乳説明書や公式サイトにおいて「スプーンを缶の中に入れたままにしないこと」を一貫して呼びかけています。これには、赤ちゃんの命に関わる重大な感染症リスクと品質劣化の2つの科学的理由が存在します。
第1の理由は、サカザキ菌(Cronobacter sakazakii)およびサルモネラ菌への感染リスクです。WHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)が策定した乳幼児調乳ガイドラインによると、サカザキ菌は乾燥環境に極めて強く、乳児(特に生後2か月未満の新生児や低出生体重児)が感染すると壊死性腸炎や髄膜炎など重篤な疾患を引き起こす危険性が指摘されています。大人の手指には目に見えない雑菌や微細な水分、皮脂が付着しており、スプーンの柄を握った手で粉の中にスプーンを差し戻す行為は、菌を缶の内部へ直接植え付ける行為に他なりません。
第2の理由は、粉ミルク湿気防止対策の破綻です。調乳時に立ち上る湯気や手元の水分がスプーンを介して粉ミルク本体に移ると、粉がダマになり、計量誤差が生じるだけでなくカビや細菌の繁殖温床となります。粉ミルクスプーン缶の中入れっぱなし危険性は、単なる「マナー」ではなく、赤ちゃんの生命維持に直結する衛生上の防衛ラインなのです。