セルボタンを押した瞬間に「カチッ」「カチカチカチ……」とリレーが激しく連打するような異音が響き、メーター照明が一瞬暗くなる現象。これは典型的なカチカチ音がするバッテリー上がりの症状です。この音の正体は「スターターリレー」のチャタリング現象であり、セルモーターを駆動するための大電流を流そうとした瞬間、弱ったバッテリーの電圧が急激に降下し、電磁スイッチがオン・オフを高速で繰り返すことで発生します。
メーターの液晶が点灯しヘッドライトが光っているからといって「バッテリーは大丈夫だ」と思い込むのは危険な落とし穴です。灯火類を灯す程度の電流(数アンペア)は残っていても、重いクランクシャフトを力強く回すセルモーターには瞬間的に50〜100アンペア以上の突入電流が必要です。無負荷状態のテスター測定で12.0Vを下回っているバッテリーは、始動時の負荷がかかった瞬間に10V以下まで落ち込み、FIの制御コンピュータ(ECU)すら立ち上がらなくなります。
出先で完全にバッテリーが上がった場合、ジャンプスターターを用いたジャンプスタート緊急対処法が有効な一手となります。近年普及しているリチウムイオン搭載の小型モバイルジャンプスターターをバッテリーのプラス端子、マイナス端子の順で接続すれば、現場で即座に始動可能です。ただし、救援車(四輪車)からブースターケーブルを引く場合は細心の注意を払ってください。四輪車のエンジンをかけた状態でバイクをジャンプさせると、オルタネーターからの過電流でバイク側のECUやレギュレーターを破壊する危険があるため、四輪車のエンジンは必ず停止させた状態で接続しなければなりません。
また、キーをONにしてもメーター類が一切点灯せず、ホーンも鳴らない完全沈黙のケースでは、ヒューズ切れと断線の見分け方を把握しておく必要があります。シート下やサイドカバー内のメインヒューズ(通常20A〜30A)を抜き取り、内部の金属プレートが溶断していないかを確認します。予備ヒューズに交換した瞬間に再び飛ぶ場合は、配線がフレームの角で擦れてショートしているか、後付けのUSB電源やグリップヒーターなどの電装品による過負荷が原因です。ヒューズが健全であるにもかかわらず全電源が落ちている場合は、バッテリー端子の緩みやマイナスアース線の断線を疑う必要があります。