「世紀の知財事件」とも呼ばれた歴史的転換点の主役となったのは、1928年11月18日に公開されたトーキーアニメーションの金字塔『蒸気船ウィリー(Steamboat Willie)』です。米国著作権法において、長年保護期間の延長が繰り返されてきた通称「ディズニー法(ソニー・ボノ著作権延長法)」による95年の保護期間が2023年末に満了し、2024年1月1日をもってパブリックドメイン(公有財産)へと移行しました。
この解禁により、『蒸気船ウィリー』および同年に試写が行われた『プレーン・クレイジー(飛行機狂)』に登場する初代ミッキーマウスは、原作フィルムの複製、YouTube等へのノーカット再配信、劇中シーンのサンプリングなどが原則として法的に自由となりました。クリエイターが原典映像をリミックスしたり、劇中カットをそのまま引用して新たな映像作品を構築したりするハードルは劇的に下がったと言えます。
しかし、ここで極めて重要なのは「ミッキーマウスという概念そのものが完全にフリー素材になったわけではない」という点です。保護期間が終了したのはあくまで「1928年当時の特定作品に描かれた表現」に限られます。ウォルト・ディズニー・ジャパンや米国本社をはじめとする権利関係者の公式見解および法曹界の定説においても、この境界線は厳格に引かれています。