「導入当初は経営陣の号令で全員が投稿していたが、3ヶ月後には更新が完全に止まり、結局は個人への直接メンションか内線電話で確認する以前のやり方に戻った」。ITmedia等の実態調査や社内アンケートでは、現場のマネージャー層からこうした悲痛な声が数多く寄せられています。
情報共有が定着しない原因を心理学および組織社会学の視点から掘り下げると、「情報の私有化バイアス」と「認知的負荷の非対称性」という2つの構造的要因に行き着きます。業務知識やノウハウをオープンに共有することは、書いた本人にとっては時間と手間を奪われる「持ち出し作業」であり、周囲に知識を無償提供することで社内における自身の希少価値を下げるのではないかという無意識の防衛本能が働きます。
さらに、「文章をきれいに推敲して誤字脱字なく投稿しなければならない」という心理的プレッシャーが投稿ハードルを異常に引き上げます。情報を閲覧して得をする側(フリーライダー)と、時間と労力を削って発信する側のインセンティブが完全に非対称である限り、いくら洗練されたUIのシステムを配備しても書き込みは途絶えてしまいます。