一般的なファンタジー小説であれば、王子様からの求婚はロマンチックなハッピーエンドの象徴だ。だが、本作は一筋縄ではいかない。壬氏が猫猫に突きつけたのは、単なる愛の告白ではなく、「自分の女になれ」という、半ば強引で、しかし悲痛なまでの懇願だった。
これに対する猫猫の反応は、極めて現実的で冷ややかなものだった。彼女は後宮という場所の恐ろしさを誰よりも知っている。身分違いの婚姻がもたらす破滅、そして壬氏の正室や側室になることが、どれほど自分の自由を奪うかを瞬時に理解したのだ。猫猫は首を縦に振らない。この「簡単にはいかない」両者の温度差こそが、読者を惹きつけてやまない魅力となっている。