男性から射精される約2億〜3億個の精子のうち、卵子が存在する卵管膨大部まで辿り着けるのはわずか数十〜数百個に過ぎません。その過酷な競争を勝ち抜いた1個の精子だけが卵子の膜を通過できます。ひとつの精子が進入した瞬間、卵子の周囲には強固な膜(受精膜)が形成され、他の精子の侵入を瞬時にシャットアウトします。
さらに生命の誕生が奇跡と呼ばれる理由は、確率の高さだけではありません。生物学的に胎児は、母親にとって「父親由来の遺伝子を持つ半分異物(非自己)」です。本来であれば母体の免疫システムによって攻撃・排除されるはずの存在を、妊娠中の母体は免疫バランスを絶妙にコントロールして受け入れます。
染色体の組み合わせパターンは無数に存在し、全く同じ遺伝子配列を持つ人間が生まれる確率はゼロに等しいとされています。数億の選別、着床のハードル、母体の免疫寛容を経て生まれてくる赤ちゃんの存在は、文字通りの奇跡と言えます。