コメダ珈琲店を語るうえで、料理のボリュームと並んで欠かせないのが滞在客の滞留時間の長さです。大手カフェチェーンが客席回転率を高めるために硬い椅子や狭小な丸テーブルを採用するなか、同店では真逆の空間設計が採られています。コメダ珈琲居心地が良い決定的な理由を分析すると、人間工学と環境心理学に裏打ちされた3つの要素が浮かび上がります。
第一に、赤色(深紅)のベロア調ファブリックを採用した大型ソファーボックス席の存在です。適度な沈み込みを持つクッションと背もたれの傾斜角は、長時間座っても腰や背中に負担がかかりにくい仕様になっています。第二に、隣接する座席との間に設けられた「絶妙な高さの木製パーテーション」です。この仕切りは、着席した利用者の視界からは他人の顔が隠れつつ、立ち上がった店員からはテーブルの状況が把握できる高さ(約110cm〜120cm)に精密に設計されており、他者の視線を遮断した「半個室的なプライベート感」を演出します。
第三に、山小屋やログハウスを想起させる無垢材とレンガを多用した内装と、スタッフの「過剰に干渉しないサービス態度」です。注文と提供が終われば、店員が必要以上に客席へ近寄ることはなく、呼び出しベルを押すまで放っておかれます。この適度な距離感が、都市生活で疲弊した現代人に安心感をもたらし、ついつい読書や作業、会話に没頭してしまう「サードプレイス(第3の居場所)」としての価値を完成させています。