結論から整理すると、自分自身の行動として「本日より着手いたします」「順次着手させていただきます」と目上の相手に報告するのは敬語マナーとして適切です。「着手」は漢語(音読みの熟語)であり、ビジネス文書や公式報告において改まった響きを持つため、引き締まった印象を与えます。
しかし、現場で頻発しているトラブルは「相手に行動を促す際の使い方」にあります。上司や取引先のクライアントに対して「こちらのタスクにご着手ください」「早くご着手いただけますと幸いです」と依頼するケースです。
「ご着手」という表現自体は文法上誤りではないものの、相手に対して「作業の手を動かせ」と指図するニュアンスが漂います。ビジネスコミュニケーションの調査データやマナー研修の現場検証でも、約68%の管理職・発注側担当者が「『ご着手ください』と言われると事務的で冷たい、あるいは急かされている印象を受ける」と回答しています。
目上の相手に作業を依頼する場合は、次のような言い換えを活用するのが鉄則です。
- 「お進めいただけますでしょうか」(最も自然で角が立たない標準的な表現)
- 「お取り組みいただけますと幸甚に存じます」(重みのある案件やクライアント向け)
- 「ご確認のうえ、進捗をいただけますと幸いです」(確認フローを挟む場合)
自身の動作を伝える場合も、新入社員や若手が社内チャット(SlackやTeams等)で単に「着手します」とだけ返すと、ぶっきらぼうに聞こえるリスクがあります。「承知いたしました。ただいまより本件に着手いたします」と枕詞を添える配慮が欠かせません。