全集を揃えるような読書ではなく、初めて山本直樹の世界に足を踏み入れる読者に向けて、読書傾向に合わせた3つの推奨ルートを策定しました。
ルートA:エンタメ性と入りやすさを重視する「王道入門ルート」
『あさってDANCE』 ➔ 『ビリーバーズ』 ➔ 『レッド』
まずは最もエンターテインメント性に富み、山本作品の代名詞でもある軽快な会話劇が楽しめる『あさってDANCE』からスタートします。独特のテンポに慣れたところで、2巻完結とコンパクトながら濃密な心理劇が展開する『ビリーバーズ』へ進み、最終的に全13巻の超大作『レッド』に挑むルートです。作風の深化を年代順に無理なく体感できます。
ルートB:極限の心理劇と歴史の闇を味わいたい「重厚サスペンスルート」
『ビリーバーズ』 ➔ 『レッド』 ➔ 『ありがとう』
軽妙な恋愛描写よりも、人間の異常心理や集団の狂気を深く考察したい読者に適したルートです。『ビリーバーズ』でカルト的集団の閉塞感を味わった後、その発展形にして現実の事件を扱った『レッド』へ直行します。最後に、人間関係の極限的腐敗を描いた『ありがとう』を読むことで、精神の限界を試されるような濃密な読書体験が完成します。
ルートC:1冊で作家性を知りたい人のための「短編完結ルート」
『僕らはみんな生きている』 ➔ 『夕方のおともだち』
長編に手を出す時間がない、あるいは電子書籍でサクッと読みたい人には、珠玉の短編・中編作品から手に取ることを推奨します。特に『夕方のおともだち』は、SMという特殊な関係性を軸にしながらも、他者との真の繋がりとは何かを問いかける名作であり、読後に静かな余韻を残します。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
読者の適性を客観的に判断するためのガイドラインをまとめました。
- 強くおすすめできる人:
- 人間の汚濁やエゴイズムを、お説教なしにありのまま描いたリアリズム作品を好む人
- 心理学、社会学、カルト宗教問題、昭和・平成のアンダーグラウンド史に関心がある人
- 感情的なナレーションや劇的な演出を排した、映画的で硬質な演出を好む人
- 購読に慎重になるべき人:
- 勧善懲悪やスカッとするカタルシス、明確なハッピーエンドを求めている人
- 生々しい性描写や、暴力、近親相姦などのタブー描写に対して強い拒絶反応がある人
- 感情移入した主人公が理不尽な死や破滅を迎える展開に耐えられない人