ネット上の情報発信で頻繁に見受けられる「著作権がないキャラクターだからグッズを作って売れば儲かる」という言説は、知財法務の観点からは致命的な誤りを含んでいます。クリエイターや企業が踏み込みがちな落とし穴には、法的な構造上の罠が存在します。
最大の見落としは、キャラクターの著作権と商標権の決定的な違いです。著作権は著作者の死後一定期間で自動的に消滅しますが、企業が自社のブランド・標識として特許庁に出願・登録している商標権は、10年ごとの更新手続きを行えば半永久的に存続します。
例えば、初期型ミッキーマウスの映像そのものは著作権フリーになったとしても、「MICKEY MOUSE」という文字商標や、3つの円で構成されたシルエットマークはウォルト・ディズニー・カンパニーの登録商標です。もし白黒の蒸気船ウィリー版のイラストをプリントしたTシャツを製造し、値札や宣伝用Webサイトに「ミッキーマウス Tシャツ」と記載して販売した場合、著作権侵害には問われずとも、商標法違反および不正競争防止法違反(周知表示混同惹起行為)として差し止め請求や損害賠償請求の対象となります。
さらに見過ごせないのが「派生著作物(二次的著作物)」の存在です。クマのプーさんを例に取ると、自由に使えるのは1926年の原作本に登場する「服を着ていない素朴なクマのぬいぐるみ」のデザインだけです。多くの消費者が真っ先に連想する「赤いTシャツを着た、ふっくらとした黄色いクマ」の造形は、ディズニー社が1966年以降に独自制作したアニメーション版の意匠であり、著作権は依然として同社が保有しています。この境界線をミリ単位で見誤れば、即座に法的紛争へと発展します。