慣用句「風上にも置けない」は、「その人の行動があまりに卑怯・低劣であり、同じ仲間のひとりとして恥ずかしくて到底認められない」という意味を持ちます。単に能力が低いことや失敗を責める言葉ではなく、人間性やモラル、職業倫理に著しく欠けている人物を強く批判する際に用いられます。
この表現の由来は、「悪臭を放つ魚」や腐敗物にあります。古くから魚市場や港町、家庭の台所などでは、傷んだ魚や生臭いものを風上(風が吹いてくる側)に置いてしまうと、その不快な悪臭が風に乗って風下(風が流れていく側)へと漂い、周囲の人々をひどく苦しめることになります。そのため、「臭うものは決して風上に置いてはならない」という暗黙の生活ルールが存在していました。
転じて、「その存在自体が悪臭を放つほどに心が腐りきっており、風上に置くことすら耐えられない」という強烈な嫌悪感を表す比喩として定着したとされています。単なる言葉のあやではなく、人間の嗅覚的な不快感をベースにした非常に厳しい軽蔑の念が込められているのです。