「セプテンバーの語源が7番目の月である」という事実は、現代カレンダーの大きな謎として知覚されがちです。英語のSeptemberは、古代ラテン語で数字の「7」を表す「septem(セプテム)」に、月の接尾辞である「-ber」が付加されて成立した単語です。本来「7の月」と命名された暦が、一体なぜ2ヶ月も後ろにスライドして9番目の月になってしまったのでしょうか。
このズレの真相を解き明かす鍵は、紀元前8世紀に古代ローマの初代建国者ロムルスが制定したとされる「ロムルス暦(初期ローマ暦)」にあります。当時のローマ人は農業と軍事行動を生活の中心としていたため、畑仕事ができない真冬の約60日間には名前すら与えていませんでした。当時の1年は現在の3月にあたる「Martius(軍神マルスの月)」からスタートし、12月にあたる10番目の月でカレンダーが終了していたのです。
つまり、ロムルス暦においては、1年の始まりである3月から順に数えていくと、セプテンバーは正真正銘の「7番目の月」でした。ところが、農業を行わない冬の空白期間を放置しておくと、太陽の運行と季節のズレが年々拡大し、社会生活に支障をきたすようになります。そこで第2代国王ヌマ・ポンピリウスが暦の大改革に着手し、冬の空白期間に新たに1月(Januarius)と2月(Februarius)の2つの月を追加する「ヌマ暦」を制定しました。
決定的な転換点が訪れたのは紀元前153年です。それまで3月1日に行われていた最高政務官(コンスル/執政官)の就任式が、軍事上の要請から1月1日へと前倒しされました。これに伴い、「1年の始まりは1月(Januarius)である」という政治的・法的な規定が定着したのです。その結果、元号のように並んでいた既存の月名がそのまま2ヶ月分後ろに押し出され、「7番目の月(September)」という名前を保ったまま、暦の上では9番目の位置に収まるという奇妙な逆転現象が固定化されるに至りました。