舞台芸術は本来、その場限りの刹那的な体験だ。しかし現代では、シネマ歌舞伎や歌舞伎オンデマンドといった高精細な映像プラットフォームを通じ、六代目松助の真骨頂をいつでも再発見できるようになった。大画面でクローズアップされる彼の表情筋の動き、息遣い、細やかな指先の芝居は、劇場の後方席からは見えにくかった細部の凄みを如実に伝えている。
さらにNHKオンデマンドをはじめとする過去の名作アーカイブでも、彼が出演した名作ドラマが次々と掘り起こされている。劇場に足を運んだことのない若い世代が、配信を通じて「この凄まじい役者は誰だ」と息を呑む現象が起きているのは、彼の放った演技が時代やメディアの枠を軽々と飛び越える普遍性を持っていた証左だろう。