会社を退職した直後の選択肢として、多くの人が直面するのが退職後の任意継続と国保の比較です。退職後2年間、前職の社会保険に個人で加入し続けられる「任意継続制度」がありますが、ネット上には「任意継続のほうが絶対に得」「国保のほうが安い」といった極端な言説が散見されます。
事実関係を整理すると、任意継続を選択した場合、会社負担だった50%分も自己負担となるため、毎月の保険料は在職中の給与天引き額のちょうど2倍になります。ただし、任意継続には「標準報酬月額の上限(協会けんぽの場合は例年30万円前後)」が法律で定められています。そのため、現役時代に月給50万円や80万円といった高収入を得ていた人は、国保に加入するよりも任意継続を選んだほうが保険料が大幅に安くなる「逆転現象」が起こります。
一方、退職理由が会社都合(倒産・解雇・雇い止め)である場合、見逃せないのが国民健康保険料の減免制度と申請です。ハローワークで発行される「雇用保険受給資格者証」の離職理由コード(特定受給資格者や特定理由離職者)に該当すると、前年の給与所得を30/100(7割減)として国保料を再計算する非自発的失業者向けの軽減措置が受けられます。この制度を市区町村窓口で自ら申請した場合、任意継続よりも国保のほうが圧倒的に安くなるケースが多発します。
また、再就職が決まった際には国保から社保への切り替え手続きが必要です。社保の保険証が手元に届いただけでは国保は自動解約されません。市区町村窓口や郵送で国保の脱退手続きを行わないと、保険料の二重請求が発生してしまうため、14日以内の届出を怠らないよう注意が必要です。
【プロの結論】国保と社保どちらを選ぶべきか?状況別の判断基準
社会保障と個人のキャリア形成という観点から、双方がどのような人に最適であるかの明確な判断基準を提示します。
【社会保険(社保)への加入・継続が向いている人】
- 扶養家族(配偶者・子ども・親)がいる世帯:追加保険料0円で家族全員をカバーできる経済的メリットは絶大です。
- 休職リスクに備えたい人:傷病手当金による最長1年6ヶ月の給料補償は、民間の就労不能保険を凌駕するコストパフォーマンスを誇ります。
- 退職前の年収が高く、自己都合退職した人:任意継続の上限規定を活用することで、高額な国保料を回避できます。
【国民健康保険(国保)の選択・活用が向いている人】
- 単身者で前年所得が比較的低い人:扶養家族がおらず、前年所得が抑えられている場合は、国保のほうが実質負担が軽くなるケースがあります。
- 会社都合退職で特例減免が受けられる人:前年給与所得が7割カットされて算定されるため、任意継続を大きく下回る保険料になります。
- 特定の同業種国保組合(医師、建設、文芸美術など)に加入できる人:所得にかかわらず定額制の保険料が設定されている国保組合であれば、高所得者でも割安に抑えられます。