大手企業の人事研修やビジネスマナー調査の現場取材において、若手社員や中堅リーダーが最も注意を払うべきポイントとして挙げられるのが、「実を結ぶ」を目上の相手へ投げかける際のリスクです。
日常会話で「〇〇部長のこれまでの努力が実を結びましたね」と声をかける場面を想像してください。一見すると敬意を込めた祝福に聞こえますが、受け手によっては「部下が上司の努力を上から査定し、合否を出した」かのような不快感を抱くことがあります。言語社会学的な観点から見ても、「実を結ぶ」という判定を下す行為自体に、ある種の客観的ジャッジ(評価者視点)が含まれるためです。
目上の人に対して成果を称えたいときは、努力を評価する物言いを避け、「相手の尽力に対する敬意」や「喜ばしい結果そのものへの祝意」に主眼を置いた敬語へと変換するのが鉄則です。
- 失礼な表現(NG):「部長の長年のご苦労が、ついに実を結ばれましたね。」(努力を部下が評価・認定している印象を与える)
- 適切な敬語変換(OK):「部長のこれまでのご尽力が素晴らしい成果となって結実いたしましたこと、心よりお慶び申し上げます。」
- 取引先向けの表現(OK):「貴社が長年注力されてこられたプロジェクトが、こうして見事な結実を見られましたことに深く敬意を表します。」
自らの行動をへりくだって報告する社内報告書やクライアント向けレポートであれば、「チーム一丸となって取り組んだ試みが、ようやく実を結びました」と使うのは全く問題ありません。主語が「自分(自社)」なのか「相手(目上)」なのかによって、適用のルールが劇的に変化することを肝に銘じておく必要があります。