三角筋は肩関節(肩甲上腕関節)をドーム状に覆う最大の単関節筋であり、体積は約380立方センチメートルと上半身の筋群の中でもトップクラスの筋体積を誇ります。この筋肉を正確に把握する第一歩は、3つの筋束に分かれた起始停止の三次元的な位置関係を整理することです。
起始部は前方から後方へと半円を描くように配置されています。鎖骨の外側1/3にあたる鎖骨外側端から起始する「前部線維(鎖骨部)」、肩の先端に位置する肩甲骨の肩峰外側縁から起始する「中部線維(肩峰部)」、そして背部へと伸びる肩甲棘の下唇から起始する「後部線維(肩甲棘部)」の3つに明確に分類されます。これら3系統の筋束は、すべて合流して上腕骨外側面のほぼ中央に位置する三角筋粗面へと収束・停止します。
この起始と停止の構造が、前部・中部・後部でそれぞれ異なる多様な三角筋の作用を生み出します。前部は主に肩関節の屈曲・内旋・水平内転を担い、中部は純粋な肩関節の外転動作(側方への挙上)を牽引します。後部は肩関節の伸展・外旋・水平外転を受け持ち、各筋束が拮抗的かつ協調的に働くことで、球関節である肩関節の自由度の高い運動を実現しています。
三角筋をコントロールする支配神経は、第5・第6頸神経からなる腕神経叢後索から分枝する腋窩神経(C5・C6)です。腋窩神経は肩甲下筋の下縁を通り、上腕三頭筋長頭、大円筋、小円筋、上腕骨頭に囲まれた「四辺形間隙(クアドリラテラル・スペース)」を通過して肩関節包の直下を後ろから前へと旋回します。この神経走行は解剖学的に非常にデリケートであり、肩関節脱臼や上腕骨外科頸骨折の際に牽引・圧迫を受けやすく、機能不全に陥ると腕を横から上げられなくなる麻痺症状を引き起こす要因となります。