この楽曲を深く理解する上で欠かせないのが、インスピレーションの源となった実在のモデル、クエンティン・クリスプ(Quentin Crisp)の存在です。彼を知ることで、ポップソングとしての軽快な表層は一変し、圧倒的なドキュメンタリー性を帯びて立ち現れてきます。
1908年に英国で生まれたクリスプは、まだ同性愛が法的に犯罪とみなされ、厳しい社会的制裁を受けていた20世紀初頭から、派手なメイクを施し、爪を染め、フェミニンな装いでロンドンの街を堂々と歩き続けました。その結果、通りすがりの人々から罵声を浴びせられ、凄惨な暴力に晒される日々を経験します。しかし彼は、決して隠れることも、自分を偽ることも拒絶しました。
自伝『裸の召使い(The Naked Civil Servant)』の映像化で広く知られるようになった彼は、70代を迎えた1981年、自由の空気を求めてニューヨークのイースト・ヴィレッジへ単身移住します。晩年、マンハッタンの安アパートで暮らしながら、独特の辛口ユーモアと気品を漂わせて街を闊歩する彼の姿にスティングは深く感銘を受け、直接クリスプのアパートを訪ねて語り合ったことから、この不朽の名作が誕生しました。