建設専門誌や業界ネットワークを通じた現場取材から浮かび上がるのは、発注者側の監理員と施工を請け負うサブコン技術者との間に横たわる深い認識の断絶だ。都内の合同庁舎新築工事に従事した空調衛生サブコンの現場所長は、取材に対して次のような苦渋の胸の内を明かしている。
「設計図面の特記仕様書には『最新版の公共建築工事標準仕様書による』と1行だけ記載されていた。だが、発注者が使用していた積算内訳の機器型番データは2世代前の仕様のままで、現場に納入しようとした段階でAPF値の未達を指摘され、メーカーへの機器差し替えにより納入が2か月遅延した。特記仕様書と標準仕様書の整合性を誰が最終確認するのかという押し問答で、工期短縮どころか疲弊しきった」
また、匿名掲示板や施工管理者向けのSNSコミュニティを検証すると、「旧版の施工要領を使い回した下請け業者が、冷媒配管の気密試験で古い保持時間(24時間保持規定の温度補正未実施)を適用して監理員に検査不合格を食らった」「標準図のディテールを無視して民間仕様の簡易防振架台を設置し、全数撤去させられた」といった生々しい告発が連日のように書き込まれている。形式的な書類提出で済ませようとする現場の甘い見通しが、厳格化する監理体制の前でことごとく破綻している実態が浮き彫りとなっている。