熱がない火照りを引き起こす病態は、主に3つの系統に大別されます。日々の臨床データやMedical DOC(メディカルドック)などの医師監修情報でも、以下の疾患群が頻度の高い鑑別対象として挙げられています。
第一に疑われるのが自律神経失調症です。過度な精神的ストレスや睡眠不足、不規則な生活習慣が続くと、交感神経と副交感神経のスイッチングが破綻します。交感神経が異常に興奮し続けると、末梢血管の収縮と拡張のリズムが狂い、上半身を中心とした突発的な熱感や冷えのぼせを招きます。
第二に、40代〜50代の女性に圧倒的に多いのが更年期障害のホットフラッシュです。加齢に伴い卵巣機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の血中濃度が急減すると、視床下部がパニックを起こします。視床下部は自律神経の中枢でもあるため、ホルモンバランスの崩壊に引きずられる形で体温調節機能が暴走し、急激な顔面紅潮や大量の発汗を引き起こします。
第三に見逃してはならないのが、内分泌疾患である甲状腺機能亢進症(代表例:バセドウ病)です。甲状腺ホルモンは全身の代謝を促進するアクセルの役割を果たしていますが、これが過剰に分泌されると、運動もしていないのに常に全力疾走しているような状態に陥ります。基礎代謝が異常に亢進するため、平熱の範囲内であっても体内で大量の熱が産生され、「常に体が熱く、汗が止まらない」「食べているのに体重が落ちる」「安静時も脈拍が100回/分を超える」といった顕著な代謝亢進症状が現れます。
加えて、夏季や湿度の高い室内環境下では熱中症の初期症状と見分け方を意識しなければなりません。熱中症の初期(I度)では、体温計が著しい高熱を示さない段階であっても、めまい、立ちくらみ、筋肉のこむら返り、生あくび、そして皮膚の熱感が生じます。これらを単なる体調不良と過信するのは危険です。