手紙やメール、メッセージアプリで意思を伝えたとき、「送信した瞬間」と「相手が確認した瞬間」のどちらで契約が有効になるのでしょうか。実務上、極めて重要な論点が意思表示の効力発生時期です。
法律上、意思表示が効力を生じるタイミングには大きく2つの考え方があります。
- 到達主義:意思表示の通知が相手方に届いた時点で効力が発生する考え方。
- 発信主義:意思表示の通知を発送・送信した時点で効力が発生する考え方。
民法第97条1項は「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」と定めており、日本法は原則として到達主義を採用しています。手紙であればポストに投函された時点、電子メールやメッセージアプリであれば相手のメールサーバーや端末にデータが記録され、閲覧可能な状態に置かれた時点で「到達」とみなされます。相手が実際に開封して読んだかどうかまでは問われません。
かつて旧民法下では、隔地者間(離れた場所にいる者同士)の契約の承諾については迅速な取引を優先するため「発信主義」という例外が設けられていました。しかし、インターネット環境や通信インフラが高度に整備された現代において発信主義を維持する合理性は薄れ、2020年施行の改正民法により承諾の発信主義(旧526条1項)は完全に廃止されました。
現在では、到達主義と発信主義の違いをめぐる混乱は整理され、契約の申込みも承諾も、すべて「相手方に到達した時」に効力を生じるという一本化されたルールが徹底されています。