漢字の世界において、日本国内で確認されている最大の画数を誇るのが、国字最多画数84画を持つ文字だ。その形状は、上部に「雲」を3つ配置した「𩇔(たい)」の下に、「龍」を3つ配置した「龖(とう)」を組み合わせた構造をしている。文字全体が真っ黒に見えるほどの圧倒的な筆画数を持つ。
この最も画数の多い漢字の読み方としては、主に「たいと」「だいと」「おとど」の3通りが記録されている。日本最大級の漢和辞典である大修館書店『大漢和辞典』の補巻(編者:諸橋轍次・鎌田正・米山寅太郎)に正式収録されており、文字コードの国際規格であるUnicode(ユニコード)にも「U+3105C」として登録が完了している正式な文字コード文字である。
文字の成り立ちと意味を追うと、非常に興味深い事実が浮かび上がる。「雲」が3つで「雲がたなびくさま」を意味し、「龍」が3つで「龍が空を飛び回るさま」を暗示させる造形美を備えている。しかし、古代中国の甲骨文字や篆書から自然発生した漢字ではない。日本で独自に作られた「国字(和製漢字)」であり、文献上の明確な哲学的・実用的定義は存在せず、「人の氏名(苗字)または屋号」としてのみ用いられた文字として辞書に採録された。