なぜ、半日近く前に飲んだはずのカフェインが夜間の睡眠を妨害してしまうのでしょうか。その鍵を握るのが、カフェイン半減期とカフェイン覚醒作用の持続時間の生体メカニズムです。
健康な成人におけるカフェインの血中濃度半減期は、一般に約4時間から6時間とされています。例えば、夕方17時にカフェイン200mg(大きめのマグカップ1杯分のドリップコーヒー)を摂取した場合、就寝時刻となる23時の時点でも体内には100mg前後のカフェインが血中に残存している計算になります。さらに、血中濃度がピークの4分の1に減るまでには約8〜12時間が必要であり、カフェインが抜けるまでの時間は翌朝まで持ち越されることすらあります。
脳内では、日中の覚醒時間に伴って「アデノシン」という睡眠物質が蓄積し、これが受容体と結合することで自然な眠気(睡眠圧)が生じる仕組みになっています。しかし、カフェインはアデノシンと分子構造が酷似しているため、受容体に先回りして強力にフタをしてしまいます。結果として疲労物質のアデノシンが結合できず、脳が「まだ昼間である」と錯覚し続ける現象が発生します。
加えて、カフェインはサーカディアンリズム(体内時計)の位相を約40分遅らせるという報告もあり、メラトニンの分泌開始タイミングそのものを後退させます。体内から完全に分解されていない状態で眠りにつこうとすることは、アクセルを力任せに踏み込みながら無理やりサイドブレーキを引いてエンジンを止める行為に他なりません。