インターネット上の相談掲示板やSNSで圧倒的に多く見られるのが、「かなり小指が曲がっているのにまったく痛くない。病院へ行く必要はないのでは?」という投稿です。しかし、ここにこそ足病学が見逃しを戒める巨大な盲点が潜んでいます。
足の小指が曲がっても痛くない理由は、変形スピードの緩慢さと神経の代償作用にあります。何年もかけて徐々に骨格が変位していく過程で、周囲の靭帯や関節包が引き伸ばされ、機械的な受容器(痛みセンサー)が刺激に慣れてしまうのです。また、痛みを避けるために無意識のうちに体重を小指側から逃がす歩行パターン(代償性逃避破行)を身体が勝手に獲得してしまいます。つまり、「痛くない」のではなく「小指を使わずに歩く異常動作が完成してしまった」状態に過ぎません。
痛覚の欠如を理由に放置し続けた結果、小指の爪は地面や靴底との摩擦で削れ、米粒ほどに退化する「爪の萎縮」や巻き爪を併発します。神経障害を伴う疾患を抱えている場合、気づかぬうちにできた靴擦れやタコから深部潰瘍へ進行するリスクも孕んでおり、「無痛だから軽症」という思い込みは即座に捨てる必要があります。