検索エンジンや質問サイトで散見される「茶トラ猫が凶暴化した」という悲痛な叫び。温和とされる茶トラ猫に、一体何が起きているのでしょうか。動物行動診療科の現場取材から見えてきたのは、猫本来の認知特性を無視した接し方によって引き起こされる「防衛的な攻撃行動」でした。
代表的な事例が「愛撫誘発性攻撃行動(ペッティング・アグレッション)」です。茶トラ猫は撫でられることを好むあまり、飼い主の膝の上で自ら催促します。しかし、猫の皮膚感覚受容器は非常に敏感であり、同じ場所を長時間撫で続けられると、快感が一瞬にして不快な痺れや痛覚様の刺激へと反転します。猫は「もうやめてくれ」という合図として、耳を伏せる(イカ耳)、尻尾の先をリズミカルにバタつかせる、瞳孔を見開くといった微細なサインを出しています。これを見逃して撫で続けた結果、突如として爪を立てたり本気噛みに至ったりする事象が、ネット上で茶トラ猫凶暴化の真相として誤認されているのです。
さらに見過ごせないのが、若齢期におけるエネルギーの爆発です。ネット上に寄せられる茶トラ猫性格やんちゃ詳細まとめを精査すると、生後6か月から3歳前後の活発なオスにトラブルが集中しています。茶トラ猫は体格が頑健で筋肉量が多く、日常の遊びで狩猟本能が満たされないと、深夜の猛ダッシュ(真空行動)や、人間の手足を獲物に見立てた激しい飛びつき攻撃へと発展します。これは悪意や攻撃性ではなく、行き場を失った健全なバイタリティの暴発にすぎません。