肩が上がらなくなる現象には、明瞭な解剖学的理由が存在します。肩関節可動域制限の理由は、大きく分けて「滑走不全」「機械的インピンジメント」「関節包の拘縮」の3つに集約されます。
一般に「五十肩」と呼ばれる病態は、正式には肩関節周囲炎と称されます。その真の姿は、関節を包む袋である関節包に微小な損傷や循環不全が生じ、無菌性の炎症が波及して結合組織が肥厚・線維化する「凍結肩(フローズンショルダー)」です。関節包の容積は通常20〜30ml程度ありますが、強度の拘縮が完成するとわずか数mlにまで収縮し、上腕骨頭が物理的に身動きを取れなくなります。
腕が上がらない原因と現在の対処法を追究するうえで、この拘縮がどの病期にあるかを見極める作業は避けて通れません。病期は以下の3段階をたどります。
第1期は激しい痛みと安静時痛・夜間痛を伴う「炎症期(フリージング期)」であり、この時期に強引なストレッチを行うと炎症を拡大させます。第2期は痛み自体は徐々に引くものの可動域が著しく制限される「拘縮期(フローズン期)」、そして第3期は線維化が解け徐々に動きが回復する「寛解期(ソーイング期)」です。現在の医療では、2026年最新リハビリガイドラインの知見に基づき、超音波ガイド下でのハイドロリリース(筋膜や靭帯間への薬液注入)や肩関節腔内ブロック注射を併用しながら、病期に応じた愛護的アプローチを選択する手法が定着しています。