現代の絵本選びにおいて、保護者や教育現場の間では激しい議論が巻き起こっています。都内の保育園に勤務する30代の保育士は、読み聞かせの現場における実情を次のように明かします。
「保護者面談で『カニが死ぬ描写がある本を園児に読ませないでほしい』と直接要望を受けるケースは珍しくありません。特に未就学児に対しては、死への恐怖やトラウマを植え付けたくないという心理が強く働きます。その結果、本棚には自然と『反省して仲直りするバージョン』ばかりが残ることになります」
一方で、小学生の保護者が集まるオンラインコミュニティやSNS上では、過剰な毒抜きに対する違和感や懸念の声が噴出しています。
「自分たちが子どもの頃に読んだ『さるかに合戦』は、悪いことをした猿が本気でボコボコにされるからこそ、理不尽な略奪への怒りや勧善懲悪の意味を学べた。いまの絵本は悪者に甘すぎる」
「騙して大怪我を負わせた加害者が、謝っただけでその日のうちに輪に入って仲良く柿を食べる展開は、道徳教育としてかえって不自然ではないか」
ネット上の掲示板や知恵袋でも、「どの出版社の絵本なら昔ながらの原作結末が読めるのか」を探す保護者の投稿が後を絶ちません。子どもを守るための配慮が、皮肉にも物語が持つ本来の迫力と教訓を奪い去っているという現実が浮き彫りになっています。